2010年09月01日

クリスタルエッジ

クリスタルエッジ
風野潮著 (YA Entertainment)
講談社 2009年12月出版 

フィギュアスケートに関する本なら、こんなジュニア向けの小説まで読んでいます。
この物語は、登場人物がちょっと多すぎる。シリーズ1作目とかで、これから人間関係を掘り下げていくならおもしろいと思うけど。
桜沢輪...主人公。中2。フィギュアスケートの選手で、父がコーチ。
結城葵...輪の親友で同じスケートクラブの選手。見た目は美少年だが、口が悪くケンカっぱやい。
藤尾千夏...輪の幼なじみ。いつも輪をからかったりする女の子。バレエを習っている。母親がバレエ教室の先生。
小池和真...中1。輪のスケートクラブに入部する。素質のある選手で、輪の家に下宿することになる。
星崎真白...女子選手の有望株。
信兄ちゃん...以前はスケートをやっていたが、怪我が元で今は、漫画家をめざす。父とは断絶状態だが、交通事故に遭ってしまう。
瑠璃...信兄ちゃんの恋人
橘廉太郎...輪の遊び友達で、芸能界をめざしている
瀬賀冬樹...輪や葵のライバルで、天才的なスケーター。
美里祐志...大学生のスケーター。

ざっとこんな感じで、一つ一つのエピソードが深く書き込まれずに展開が進んでいくといった物語です。
しかし最後の大会の様子が、魅力的に描けていて、こんな男子選手のプログラムが今まであったかどうかわかりませんが、あればおもしろいのになと思った。

”オーケストラの音が響き渡り、瀬賀が滑りだす。光沢のあるヒラヒラのブラウスをなびかせて、冷たい空気を切り裂いていく”
”華麗なクラシック音楽に乗って、流れるように難しい技を次々とこなしていく。全日本ジュニアのときほどではないかもしれないが、瀬賀の演技にはやはり光り輝くような華やかさがあった。最初の大失敗を補って余りあるほどのカンペキな出来だった。それなのに、演技を終えてリンクサイドに戻る瀬賀の表情は暗かった。こいつ、どんだけ理想が高いんだろう。”
”イエローにブルーの縁取りの中国風衣装という風変わりでコミカルな服を着ていても、目を伏せて音楽のスタートを待つ葵は女の子と見紛うくらい美しかった。”
”誰よりも高く、大きな軌跡を描いて、葵はトリプルアクセルを成功させた。着氷もきれいに引っかかりなく後ろに流れる。”
”葵の欠点は、体が硬く動きにもなめらかさがなくてぎこちないので、芸術的な評価(旧採点で言うとプレゼンテーション)がどうしても低くなってしまうことだった。だけど、この「少林サッカー」のプログラムなら、手足の動きが直線的でも雰囲気的にOKだった。ステップにもサッカー風のキックや拳法のポーズを取り入れてコミカルにすることで、硬い動きをも演出に見せているのだ。
 まるで空手の型をスケート靴履いたままやってみせたようなストレートラインステップに、客席から歓声と笑いと拍手が起こる。”
”スピンの後、リンク内を「の」の字を描くように滑り、ダブルアクセルの助走に入っていく。左足のアウトサイドエッジに体重を乗せ、勢いよく前へと踏み切った。風を切って体がコマのように回転する。一瞬、自分がつむじ風になったような気がした。すぐに右足に衝撃を感じたと同時に、すぅーっと体が後ろに流れていく。”
”いつのまにか、音楽に乗って全身が躍動していた。なんでもないつなぎの滑りの部分でさえ、ずっとリズムとメロディーを感じていた。今までただタイミングを見計らって腕を上げ下げしていただけのところも、音楽を感じながら動かすだけで表情が生まれる。ただ映画のストーリーを追って演じるだけじゃなく、音を感じながら演じることで、動きの流れが自然になる。”
”いつのまにかリンクが大海原に変わっていた。大きく揺れる帆船の上で、攻めてきた軍の兵士と勇ましく戦う、おれは海賊。剣を突き出し、相手の剣先をかわし、上体を激しく上下させながらひたすら前進する。敵を倒しながら船の甲板の端から端まで進んでいく、渾身のストレートラインステップ。ここがいちばんの見せ場だ。”
”つかみはオッケー”

 ちなみに使用した曲は、瀬賀がラフマニノフの「ピアノ協奏曲2番」で、葵が「少林サッカー」 輪がスッペの「軽騎兵序曲」



posted by ホープ at 01:51| BOOK | 更新情報をチェックする